ナノテク応用高性能有機半導体材料
有機半導体に関するホットな話題を1つ紹介します。
TFT(Thin Film Transistor)というトランジスタが、薄型テレビなどでごく普通に使われています。
このTFTにシリコン半導体を使う場合、製造プロセスが複雑で、真空度や温度を高く保つ装置が必要となります。
それだけコストがかかるわけです。
一方で一部の有機半導体を用いると、大気中で塗布するという簡単なプロセスで、成膜が可能となります。
ただし課題もあります。
ペンタセンなどの低分子有機化合物を使うと、電荷キャリアの移動度は比較的高いのですが、その場合はシリコン同様、成膜に真空状態が必要となってしまうのです。
一方、ポリチオフェンなどの高分子有機化合物を使うと、大気中での塗布で成膜できるのですが、キャリアの移動度が低いという欠点、また大気中で性能が低下してしまうという欠点があります。
つまり大気中での塗布で成膜可能な材質では、TFTに求められる性能がなかなか出なかったのです。
これに対して東レは2008年3月28日、大気中での塗布で成膜できる有機半導体の中に、微量の単層CNT(カーボンナノチューブ)を均一に分散させることで、有機半導体の結晶間でのキャリアの流れをスムーズにすることに成功したと発表しました。
塗布プロセスで作製した有機半導体薄膜は、結晶サイズが小さくなりやすいという特徴があります。
一方キャリアの移動速度は、結晶の内部で速く、結晶の間で遅いという特徴があります。
その結果、塗布プロセスとキャリア移動度は両立させにくいのです。
しかし単層CNTが橋渡しすることで、この結晶間問題がクリアされました。
さらに細かくみた時に、2つの工夫があります。
1つは、微量のCNTを効果的に作用させるために均一に分散させる技術です。
そのためにCNTの表面にポリ-3-ヘキシルチオフェンという高分子材料を付着させました。
これは凝集を抑制し、しかも導電性を阻害しないという特徴を持っています。
もう1つは、有機半導体の共役構造における工夫です。
有機半導体が塗布プロセスで成膜可能であるためには、溶解性が高くなくてはならないのですが、これがやはり移動度を低下させやすいのです。
同社では、有機半導体の共役構造の中に、溶解性を高める柔軟構造を組み込むことで、この二律背反を解決しました。
さらに、酸化に対して安定な分子構造を取り入れ、大気中での長期間保存で劣化が少ないことも確認しています。
その結果実現した半導体は、移動度が1平方cm/ボルト秒、オンオフ比が10**5(10の5乗)ということで、これはTFTで用いられているアモルファスシリコンとほぼ同等の良好な値です。


